学会・研究論文紹介/Papers


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最新研究論文の紹介/ Newly published paper

[1] Imaging and sensing of pH and chemical state with nuclear-spin-correlated cascade gamma rays via radioactive tracer K. Shimazoe*, M. Uenomachi*, H. Takahashi, Communications Physics (2022)

「核スピン相関ガンマ線もつれ光子を用いたRIによるpHと化学状態センシングと可視化」

概要:従来の核医学イメージングはRI(Radioisotope)の集積を可視化することで悪性腫瘍の早期検出を行っています。一方で蛍光イメージングで用いられるようなFRETなどの相互作用や化学状態の検出を行う事のできる技術は存在していませんでした。本研究では新たに核スピンによって時空間放出相関が決定されるカスケードガンマ線放出核種を用いた新たな量子センシング・イメージング手法を考案・開発しました。核スピンの有する電気四重極による超微細相互作用を化学状態の検出手法および核医学のイメージング手法として確立しました。本手法を用いることでRIの集積に加えて、pHや化学結合状態等の局所の高次情報が可視化可能になります。また核スピンとガンマ線をベースとした新たな量子センシングプッラットフォームとして様々な応用が考えられます。

[2] Simultaneous in vivo imaging with PET and SPECT tracers using a Compton-PET hybrid camera, M. Uenomachi, M. Takahashi, K. Shimazoe,…, A Tsuji. Scientific Reports (2021)

「コンプトンPETハイブリッドカメラによるPET/SPECTトレーサーのin vivo同時撮像」

概要:PET (Positron Emission Tomography)とSPECT (Single Photon Emission CT)はそれぞれ悪性腫瘍の早期発見や抗体分子動態撮像において重要なイメージング技術ですがこれまで検出構造の違いから融合してイメージングすることが困難でした。我々の研究室では新たにコンプトンPETと呼ばれる構造を考案し、PETで使われる陽電子放出核種の薬剤とSPECTで用いられる単光子放出核種の同時撮像を世界で初めてコンプトン撮像技術とPET技術の融合により実現しました。論文の中では18F-FDG (グルコース代謝を撮像)と111In-抗体 (悪性腫瘍をターゲットにした抗体薬)の物理実験での同時撮像とマウスによるin vivo同時撮像の結果を報告しています。本技術によりFDGによる悪性度と111Inラベル抗体による分子診断の同時撮像により悪性腫瘍の進行度やステージングによるより高度な診断・治療選択が可能となると想定されます。

[3]Background reduction in PET by double Compton scattering of quantum entangled annihilation photons. Kim, D., Rachman, A. N., Taisei, U., Uenomachi, M., Shimazoe, K., & Takahashi, H. (2023). Journal of Instrumentation, 18(07), P07007.

「量子もつれPETによる信号バックグラウンド比の向上」

概要:PETでは陽電子と電子の対消滅から発生する511 keVのエネルギーを有する対消滅ガンマ線2本が用いられています。これまでは光電吸収によりエネルギー測定と同時計数により画像化がされていました。一方で対消滅ガンマ線は「量子もつれ」状態にあることが知られています。コンプトン散乱現象を介してこのガンマ線の偏光の量子もつれ状態を計測することで、従来のPETよりも信号バックグラウンド比を向上することが可能であることを実験的に実証しました。コンプトン散乱を利用するため感度は低くなりますが、画質は向上する可能性があります。今後はPETとQEPET(Quantum Entanglement PET 量子もつれPET)の融合による画質の向上が期待されます。

[4] Uenomachi, M., Shimazoe, K., Ogane, K., & Takahashi, H. Simultaneous multi-nuclide imaging via double-photon coincidence method with parallel hole collimators.  Scientific Reports 11, 13330 (2021)

「パラレルホールを用いた2光子同時撮像法を用いた多核種同時イメージング技術」

PETは陽電子放出核種、SPECTは単光子放出核種を用いる撮像技術でそれぞれ50年以上の歴史がある高感度な核医学分子イメージング手法です。我々の研究室では新たに複数光子放出核種(カスケードガンマ線放出核種)を用いたDPECT (Double Photon Emission CT)法を考案し、イメージングの高感度化、低バックグラウンド化を実証してきました。本論文では臨床SPECT診断薬として用いられる111In(インジウム)及び、β線治療核種として期待されている177Lu(ルテチウム)を2光子撮像技術を用いることで複数分子を同時に撮像できることを実証しました。本技術により111Inでの診断と177Luでの治療を同時に可視化可能になるため診断と治療の融合(セラノスティクス Theranostics)への貢献と進展が期待されます。

[5] Jiang, J., Shimazoe, K., Nakamura, Y., Takahashi, H., Shikaze, Y., Nishizawa, Y., ... & Yoshikawa, A. (2016). A prototype of aerial radiation monitoring system using an unmanned helicopter mounting a GAGG scintillator Compton camera. Journal of Nuclear Science and Technology53(7), 1067-1075.

「GAGGシンチレータコンプトンカメラを搭載した無人ヘリによる航空機放射線モニタリングシステムの開発」

福島第一原子力発電所事故により、福島県内や周辺において137Cs, 134Csなどの放射性核種が飛散しました。現在は除染作業によって多くが取り除かれていますが、ホットスポットの検出による高線量箇所の発見、また現在は環境モニタリングの観点から沈着量を正確に把握する技術が望まれています。事故当時は、有効なイメージング技術が存在しておらず状況の把握が困難でした。また航空機モニタリングは飛行高度によって空間分解能や撮像精度が制限されるため高精度な撮像技術が望まれています。我々の研究室では開発してきたガンマ線イメージング技術をもちいて無人ヘリコプターに搭載し、地上の沈着量を高分解能で計測する技術を開発し、福島県内の川沿いのCs-137の沈着量を計測することで実証しました。 

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